日本最北端と日本最北限について
日本領土最北の地は択捉島カモイワッカ岬(北緯45度33分19秒)である。
そして領土問題が未解決のこの島を除き、現状支配下領土での最北地を地図から探してみると宗谷岬と須古頓岬(礼文島)がほぼ同緯度に位置している。それぞれの緯度は
宗谷岬:北緯45度31分14秒
須古頓岬:北緯45度27分45秒
であり、宗谷岬が最北となる。
しかし実際には緯度の比較は岬先端だけで行なわれるわけではない。須古頓岬の北方沖合いには海驢島(トド島)という無人島(かつては季節により定住していたらしい)があり、さらにその北方には種島という岩礁がある。この種島こそ礼文町の北限であり、その緯度は北緯45度30分14秒である。
※満潮時にも水面上に現れていれば領土の扱いになる。
これに対し、宗谷岬の北方沖合いには弁天島という稚内市管轄の岩礁があり、この岩礁の緯度は、北緯45度31分30秒である。
この結果、1分16秒の僅差でやはり宗谷岬(稚内市)側が最北となる。
この弁天島こそが、北方領土が返還されぬ現在における日本支配下領土最北の地ということになる。
宗谷岬(弁天島含む)は訪問可能な最北領土としての”日本最北端の地”であり、須古頓岬(種島含む)は戦後まもなく引かれたマッカーサーラインが由来となっている”日本最北限の地”であり、ともに道北の観光名所である。
将来北方領土が返還された時には、宗谷岬は”日本最北端”表記を”本土最北端”表記に変更しなければならないなどと騒がれる可能性もある。そうなるとあの立派な”日本最北端の地”の碑は改装する必要も出てくるだろうし、その周辺のお店や宿も”日本最北端の××”を掲げていることに抵抗が出てくる。
しかし、北方領土返還後の択捉島カモイワッカ岬はなにも宗谷岬から”日本最北端の地”の肩書きを奪う必要はない。カモイワッカ岬は新たな肩書きとして”日本最北緯の地”を名乗れば良いと思う。言葉の持つ意味を考えた場合、最北端にしても最北限にしても、最北緯に位置しなければならない理由はない。最北緯度でなくとも北側国境に面した岬であれば、日本最北端を名乗ろうが日本最北限を名乗ろうが嘘にはならないはずである。これまで観光地として貢献してきた宗谷岬、須古頓岬は北方領土返還後もそのままの表記でいつまでも最北情緒を観光客に与えてほしいものである。