日本一高い鉄塔

高さ日本一の鉄塔というと普通は東京タワーを思い浮かべる。しかし20世紀末までは実は高さ”日本第3位”であった。この当時、東京タワーを日本一と呼ぶには”日本一の鉄塔”ではなく、”日本一の自立鉄塔”としなければならなかった。すなわち自立という条件を除けば東京タワーより高い鉄塔は日本に2つあった。(そのうち1つはなんと東京都にあった。)
しかし残念ながらその2つともGPSの発達により役目を終え、21世紀を待たずして取り壊されてしまった。現在は名実ともに東京タワーが日本一である。20世紀における日本の鉄塔、高さベスト3は以下の通りである。

@ オメガ鉄塔(455m)        地図
福岡市の北北西147kmに位置する”韓国との国境の島”、対馬島(長崎県)。この島の北部、上対馬町に高さ455mの東洋一の支線式通信鉄塔がそびえたっていた。GPSの発達に伴い、1997年9月にオメガ局としての役目を終え、2000年3月に解体された。
※オメガシステム: オメガ受信機による電波航法システム。GPS(衛星航法システム)の急速な発達・普及により廃止されつつある。
A ロランCタワー(411m)      地図
硫黄島(小笠原諸島)に411mの支線式通信鉄塔がそびえたっていた。ロランCは当初、アメリカの沿岸警備隊隊員により運用・維持管理などを行っていたが、その後、海上保安庁に移管された。その後新島にマスター局が移され、硫黄島のものは役目を終え1994年頃取り壊された。
※ロランCシステム: ロラン受信機による電波航法システム。米国では廃止方向にあるが日本では継続運用傾向にある。
B 東京タワー(333m)        地図
自立鉄塔では文句なしに完成当時から現在まで日本一である。
では何故、20世紀の時代には東京タワーをしのぐ2つの鉄塔は注目を浴びなかったのか。おそらく以下の理由と考えられる。
東京タワーは日本の首都、東京のシンボルでもあり観光名所でもある。日本3位では様にならない。
当時の対馬は観光の島ではないため、この鉄塔は日本一を誇る必要もなかった。
硫黄島にあたっては昔はおろか現在においても海上自衛隊、海上保安庁、旧島民墓参団など特別に許された人しか入島できない状況にある。ここで日本第2位を誇っても意味がなかった。